2022.04.12
家づくり

現代の木材加工技術

一級建築士|井上秀樹

プレカットは遣いよう

最近、構造材加工の主流となったプレカット

一般的に、狂いのない乾燥木材に継ぎ手を加工する。現場にその木材を搬入し上棟。継ぎ手が緩くハンドハンマーで軽く叩いて組み上げるボルトで緊結することでようやく自立する。ちなみにボルトで緊結するまでは、足場より揺れる。

我々のプレカットは、弾性に富んだ粘りのある自然木材を使用し、継ぎ手をあえてきつく加工し、大ハンマーで叩き込むことで組み上げる。ボルトは繋いでなくとも揺れはそこまでない。むしろ足場の方が揺れる。

大工の手刻みの最大利点であるきつい継ぎ手を大ハンマーで叩き込んでも割れない粘りの(弾力性)ある自然木材が使用できるところを踏襲している。建築に期間がかかるため、その間に木材が乾燥するから、何の問題もない。我々のつくる家も建築中も建築後も呼吸する材料で造られているため、隠蔽部分となる木材であっても乾燥していく。


乾燥木材の闇

最近流行りの高気密住宅でよく使われているKD材。高気密住宅は湿気の逃げどころがないので、強制機械(重油ボイラー)乾燥の粘りのないスッカスカの木材で造らなければならない。逆に自然材料を使えば壁の中が湿気でカビだらけとなり、建物に著しいダメージを与えることになる。

また棟数がやたらと多いメーカーも着工から引渡しが45~60日と極端に短く木材に乾燥する時間を与えてくれない。さらに次から次へとこなさなければならず自然乾燥は待っていられないので、短時間で調達できるKD材、エンジニアリングウッド(集成材、LVL等)を使用している。

ただ粘りがないということは由々しき問題で、想定外の外力が入力されたとき、弾性変形することなく一気に倒壊する。これを脆性破壊という。

KD材ありきの家は、木材の乾燥する時間だけでなく、災害時逃げる時間も与えてくれない。よって命を失う危険性がある。

建築基準法第1条には「国民の生命、健康及び財産の保護を図る(抜粋)」こととなっている。最近、これさえ遵守されていない家が増殖してきている。要注意である。