2022.04.10
家づくり

屋根の軽量化で耐震性アップの嘘

一級建築士|井上秀樹

軽量屋根の代表格「スレート瓦」

軽量瓦のスレート瓦。倉庫の屋根などに使われている波型スレートと材質は同じ。そのスレートを平板のまま塗装している。

平板とすることで瓦自体の強度は皆無。コンパネ下地と一体化することで屋根として保持できる。厚みが6mm程度しかないため、通気のため下地と間隔を設けようものなら、屋根に乗った瞬間に割れてしまう。

また紫外線の強い熊本では5年毎(もって10年毎)に再塗装が必要。家の規模にもよるが足場込みで80~120万円が相場。これが5年おきに必要。さらに寒暖差による屋根内部の結露によって下地コンパネが朽ちてくる。こうなってくると屋根自体の改修が必要で350~400万円コース。耐水コンパネ仕様ならまだいいが、中には内装用の一般コンパネで下地をつくっているところもあるので注意が必要

なぜこんな素材が屋根に。と思われるだろうが、メリットは屋根の軽量化とローコストにある。

耐震性を考えるなら軽量瓦

現在益城町で新築をしている。周りがスレート瓦ばかりなので、地震で壊れた家を改築するのに負担が大きいからかと思っていたが、どの家もそこそこ高い。

てっきりローコストゆえのスレート化と思っていたが、メーカー曰く耐震性向上のために軽量屋根がいいらしい。

残念ながら屋根の軽量化だけでは耐震性向上には繋がらない。なぜか。屋根の軽量化と共に横架材(上からの荷重を支える横方向の部材)である梁桁のサイズも小さくしてしまっているからだ。耐震性を上げるには瓦屋根である重量屋根を支える構造のまま屋根を軽量化しなければならない。恐らくこの界隈の方々はいいカモにされた可能性が高いだろう。(構造見ていないので断定はできないが…)

ちなみに木造建築物は軽量の建築物とされ、地震動による影響は(鉄筋コンクリート[RC]造建築物より)少ないとされる。むしろ軽量ゆえ風圧力に対しての検討が重要になることが多い。

耐震性能ばかり銘打って、シャッターもないような家をつくるようなメーカーは正直話にもならない素人同然。数年後に泣きを見るのは建築主であることを肝に銘じてほしい