2021.09.10
日常の思いつき

審美眼を持とう!

一級建築士|井上秀樹

審美眼を持とう!

審美眼を持つとは、材質や造り込みなどからモノの絶対価値を理解できる目を持つということ。「お目が高い」という誉め言葉で言い表される。一般的に老舗メーカーのつくるモノは、材質、造り込みにおいて最高クラスであることが多い。当然高価格であるが、価値は下がることはない。いいモノはいいということを体現している。

写真はキングオブクリスタルグラスの「バカラ」。グラスの材質もガラス職人のウデマエも最高。割らない限り、クリスタルグラスの透明感は永久に霞むことはない。フランスを代表するクラフツマンシップ(職人魂、職人芸)あふれる逸品だ。

逆にCMばかり特化したブランド先行型メーカーも現れた。莫大な広告費を使い、ブランドのイメージ化(ブランディング)を図る。いい商品と思わせ、高価格で販売。知識のない者は、真価に気づくことなく買い続ける。高い値段の割りにパッとしないと思ったら、恐らく中身の伴わないブランディング商品かも。

違いの分かる大人にならないと損をする世の中になってきている。

これは100円ショップのグラス。パッと見100円とは思えないクオリティーだ。企業努力の賜物だろう。但し、グラスの曇りなどから一定期間で買い替えを余儀なくされるだろう。低価格なのでそれはアリだと思う。

100円の商品を100円で買う。バカラをバカラの値段で買う。至って普通のことだ。その逆はどうだ。100円の商品をバカラの値段で買う。バカラを100円で買う。

後者はまずありえないが、前者のような現象は実際に増加している。モノの絶対価値を学ばなくては、まがい物に大金を使うことで満足することになる。

住宅メーカーには安く作った家を安く売るメーカー、高く作った家を高く売るメーカーが存在した。彼らは至って普通だった。ところが、最近こういう住宅メーカーが存在しなくなった。

現在は強烈に広告を打ちまくりブランディングに特化した住宅メーカーが闊歩している。いかにも良さそうな広告だが、実物は驚愕だらけの家を何軒も見た。個人的な恨みでもあるのかと錯覚するほどだ。無知(売る側、買う側の両者)ということはどれだけ恐ろしいことか実感した。今や住宅メーカーは使った広告費を回収すべく安く作った家をできるだけ高く売っている。広告費が大きくなるほど、回収すべき経費が嵩み、家の原価をとにかく下げ、販売価格は購入者借入額MAXへと誘導した高額ローンが必須になる。だが、この類のメーカーでも価格が高いだけで安心感はまだある。むしろ工務店の方が危険度MAX業者の数も多く遭遇率も高い優良な工務店に出会うのは至難の業でもある。

いずれにしても見る目がないと餌食になるだけ。そうならないためにも学びは必要だ。