2021.08.30
家づくり

リフォームは既存構造がキモ

一級建築士|井上秀樹

リフォームは既存構造がキモ

解体前の和室。まず、リフォームの際に重要とされることは、建物のつくりがしっかりしているか、という点。このことを家の素性と呼んでいる。素性のいい家はこれから先も朽ち果てるようなことはないと言ってもいい。逆に言えば、素性(構造上主要な部分)は後から改修するには、大きな費用が掛かる、若しくは改修不可であることが多い。

最近流行りの家は、マッチ棒みたいなフレームで造っているのも関わらず、耐震に優れているなどと謡っている。

実は現行法規に則って造ってある今の家はどの家も新築時は耐震性は兼ね備えている。大事なのはその耐震性を20年先30年先保有維持できるかということ。残念ながら最近の住宅は日本の過酷な気候での経年劣化に対しての耐性を考慮されていないのかと思えるような構造がほとんど。つまり素性の悪い家ばかりだということ。20年30年たった時、リフォームよりも建て替えをオススメしなければならなくなる。

家が技術屋が造る「資産」ではなく、車や白物家電と同じような「商品」と同じ括りに変遷したことによる弊害と言えよう。

現在、リフォームさせて頂いている家は、外観や室内のつくりから素性のいい家だと判断し、リフォームを選択した。床壁天井を撤去して素晴らしい素性であることが確認できた。深い軒、陶器瓦、十分な大きさのフレームどれをとっても不安要素は微塵もない。

素性のいい家は、内外装や間取り変更で主要なフレームなどは改修せずとも未来永劫存在することが可能だ。

かつての和風建築が近代和風へと変貌する。今から完成が楽しみだ。