2021.07.19
家づくり

基礎形状と地盤改良

一級建築士|井上秀樹

基礎形状と地盤改良

基礎形状にはいくつかの種類がある。種類によって、コストや地面に求められる耐力が異なる。

布基礎はひと昔前の形状であり、最近はほとんど見かけることはなくなった。築30年クラスの家がそうなっている。しかし、超大手住宅メーカーはいまだにこの基礎形状としているところがある。

一概にコンクリート使用量が減りコストダウンできる。が、接地面積が少なくなるのでめり込みやすく、相当な地耐力が求められ、地盤改良が必要となるケースが多い。

コストダウン分を還元せず、地盤改良で追加金が取れれば、業者にとってこの上ないドル箱基礎

築20年頃から積極的に採用され始めた基礎形状であるベタ基礎。建物下部全体を一体成型の一枚のコンクリートの板で支えるような形状で、広い接地面積で建物の重さを分散させることにより、少ない地耐力でも大丈夫

コンクリート使用量が多く、コストはかかるが、地盤改良が出にくく、地面からの湿気も防いでくれ、木造住宅に適した基礎形状だと言える。

簡易的に必要な地耐力を求めてみる。10m×10m=100㎡の木造住宅を想定。木造住宅の自重は1㎡当たり300kgなので300×100=30000kg=30t

基礎の自重は、使用コンクリート量を図面から求めると、5.7㎥(立方メートル)。コンクリートの重さは1㎥当たり2.3t。5.7×2.3=13.1t

建物全体の重さは43.1t

基礎の接地面積20㎡

接地圧は43.1÷20=2.15t/㎡

建物の自重など常時かかっている荷重を長期荷重。地震力、風圧力、積雪荷重などの外力を考慮した加重を短期荷重

短期荷重は長期の2倍で設計されるのがほとんど。

よってこの基礎形状の場合、4.30t/㎡以上の地耐力を有する地面に建てるのがいいだろう。

次にベタ基礎の場合。

建物自重は前回同様30t。コンクリート量を図面から19.1㎥。基礎重量は19.1×2.3=43.93t。建物全体の長期荷重73.93t。接地面積100㎡。73.93/100=0.739t。

短期を想定し、0.739×2=1.478t/㎡

よって、つい最近まで水田か沼だったような場所でなければ、1.5t/㎡くらいの地耐力は普通に出る地盤改良をあまり必要としない基礎形状であると言える。

次に弊社採用の犬走付きベタ基礎。コンクリートをふんだんに使うためコストもかかり、重量も増し増しだが、接地面積が最大に取れ、接地圧を大いに下げることができ、長期にわたり家を支えてくれる。

コンクリート使用量20.85㎥。基礎重量20.85×2.3=47.96t。建物総重量77.96t。接地面積121㎡。接地圧77.96/121=0.644t/㎡。短期荷重を考慮0.644×2=1.288t/㎡

普通のベタ基礎より必要地耐力が200kgほど下がった。犬走は構造的にも大いに意味があることがわかった