2020.08.20
家づくり

ユーチューブで有名住宅メーカーの見積発見

一級建築士|井上秀樹

最近流行りの木造平屋の見積

 平屋の見積のようだ。外壁サイディング、屋根スレート瓦(俗に言うコロニアル)。普通の造りだ。税別¥11,822,000。なかなかの手頃感。ちょっと期待。

続いて付帯工事

 付帯工事、確認申請代、設計料は別途でもわかるが、足場などの仮設費、産廃費、建物外部の給排水配管などは本体価格に含まれていない。つまり本体価格だけでは、電気も来ない。水も出ない。ただの箱の状態。新車を買ってタイヤ、ハンドル、シートはオプションと言っているようなもの。計¥2,484,000(税別)

オプション工事費

 お施主様の希望による目に見える追加という項目。ポーチタイルが含まれてないのはどうかと思う。家の玄関ドアから出た瞬間から砂利。玄関までのアプローチどころかエントランスもない。不親切極まりない。下屋もない。玄関開けた瞬間から雨に打たれる。玄関水浸し。屋根に雨対策されていないオープンカーみたい。ドアを開けたらたまった雨がどっと車内に入りこむ。(普通の車はルーフに雨の流れる雨樋みたいな溝が造ってあるため、一気に車内に雨が流れ込むようなことはない)サイズも1.8m×0.9mで¥324,000。結構頑丈な庇ができるのだろう。逐一追加額が高いのが気になる。

フチなし畳へ変更で¥126,000

 これは多分差額ではなく、半畳畳12枚分の価格である。八代産の畳表でつくって約¥10,000なので12枚で¥120,000だ。本物の琉球畳であれば一枚¥20,000は超えてくる。差額でこれなら超一級品の琉球畳なのだろう。

家の規模が20.75坪だったとは…

 他にも追加がどんどん出そうな雰囲気だが、なにも希望を言わずメーカーの言いなりでつくったとして、本体価格¥11,822,000+付帯工事費(これまでしないと住む事ができない)¥2,484,000=¥14,306,000。坪単価は¥14,306,000÷20.75坪=¥689,445。室内は大理石でも貼っているのかな。端数は値引して頂いてもまだまだ高い。平屋は高い。

室内はいたって普通だった

 動画での室内は床はカラーフロア、壁天井はクロス。一般的な住宅メーカーの仕様。坪単価約70万円の仕様とは程遠い。さらに外構に200万円弱。家が平屋20坪であれば敷地も100坪とは考えにくく恐らく50坪くらいだろう。とすると家が20坪、残りの外構で30坪。日本庭園でも造られたのかな。また照明カーテンが別途、希望による追加、消費税その他諸々で坪85万くらいになりそうだ。

 会社規模が大きくなるほど、経費というのは当然必要で受注を取るために営業スタッフを増やし、信用度を上げるため各メディアに多額の資金を投入して広告を打ちまくる。受注棟数を増やし売上高を確保する。棟数が増えるとスケールメリットで下請け業者を叩き原価を下げ、経費を確保お客に還元する気はさらさらない。原価圧縮のため、家はどんどん簡素化陳腐化し、資産価値をなくす。しかし商売のツールとしては抜群だ。たいした知識も必要とせず、受注金額の半分が粗利となる究極のツールそんな家が横行している。ご自分の資産が食い物にされないよう勉強が必要。勉強することで危険を回避できる。しかも難しいようなことはなく専門的な勉強は不要で小学校5年生くらいの知識で判断できる。おかしな家は普通に考えてみると矛盾点ばかりなのだ。

 やたらCMが多く、営業スタッフばかりで技術職がいないようなメーカーの家を見ると本当に悲しくなる。日本建築をバカにするなと言いたい。そういうメーカーはクレーム処理が増えてきそうな10年ほどで法人名を替え、新たに次のターゲットを多額のCMを駆使し捕捉する。現在CMを鵜呑みにしては痛い目を見ることになる。広告は金さえ積めば広告主に不利になるようなことは決して言わない