2020.07.08
★お知らせ

自分の身は自分で守る

一級建築士|井上秀樹

災害時は引き際が肝心

 線状降水帯による瞬間的な大雨で川が氾濫し、各地で被害が起きている。水による被害はダメージも甚大だ。日本の治水事業は優秀であったが、ここ最近は異常気象により安全神話が崩れつつある絶対に安全だとの思い込みは止めるべきだ。自分がいる場所の情報をいち早くキャッチし、危ないと思ったらすぐ逃げることを最優先に考える必要がある。

地元の氷川も警戒水域に達した

 地元の氷川も水量が増している。ここまで水位が上昇したのは初めてだ。記録によると氷川が氾濫したのは、約100年前だ。早々起きるような事案ではない。が有事のための準備は必要だ。今回の球磨川も普段は穏やかで、中流付近は緑も多い景勝地で、その景勝地を眺めながら川を下る「球磨川下り」は情緒あふれる日本の風情を感じられる人気アトラクションだ。一部流れの早いところでは、スリリングな体験が出来る「ラフティング」が若い人の人気を集めている。それが、7月4日の大雨で球磨川は形相を変えた。川幅が一時的に狭くなる中流付近が氾濫し、そこに位置する球磨村、芦北町、人吉市、坂本町を飲み込んだ。水流のエネルギーは凄まじく、森の木々、橋、家を一気に押し流す。水流から逃れた地域は浸水により家財道具、家などが廃品と化す。誰もこんなことは予想していなかった。人吉市のシンボルでもある茅葺き屋根の美しい国宝「青井神社」もダメージを受けた。お堀やお堀に掛かる橋は見るも無残な姿となった。しかし不幸の中でも幸いなことに茅葺き屋根は無事であった。50年前の氾濫時は青井神社周辺水位は約2m程度だったのに対し、今回は約4mという。歴史や経験則を鵜呑みに出来なくなった。独自のリスクマネージメントを確立する必要がある。

ハザードマップを確認しよう!

 自分のいる地域のハザードマップは最低限確認しておこう。川が氾濫したらどのルートで水流が起きるのか、どの部分の水位が高く(深く)なるのか、水が来ない高台はどこか、髙台まで安全に行けるルートは、土砂崩れが起きそうな場所は、などの有事のための事前確認が必要だ。この場合のリスクマネージメントで重要なことは、住人が元気な状態で逃げ切ること。これに尽きる。危険時は一時撤退し、安全が確保できた時点で活動開始。災害復旧にはマンパワー(人による労働力)がとにかく必要になる。その戦力が多いほど復旧の進度が上がる。

 復旧作業も始まったばかりだが、またあの穏やかな風情ある景勝地「球磨川」の一日も早い復活を祈るばかりだ。