2020.06.08
家づくり

あぶない住宅メーカーはここを見れば察しが付く!

一級建築士|井上秀樹

梁の重要性

 梁の重要性とは。最近、どういうわけか金属屋根を持つ住宅が増えてきた。屋根が軽量であるため、それを支える梁の部材寸法を小さくできるという。元来、金属屋根というものは積雪地方で用いられる屋根工法だ。積雪荷重を考慮して屋根を軽量化している。しかし、梁寸法は重量瓦屋根用としている。それに加え、折板という山形の鋼板屋根もある。これはとにかくローコスト。コストがかけられない倉庫店舗などに採用されている。消防法防災上の観点から、ガソリンスタンド、自動車修理工場に多く使われている。ここ熊本は風も雨も強く日差しも強いこの地域で断熱も皆無、雨の音はうるさく、風による吹き上げも心配な屋根でわざわざ造る必要もない。

梁の重要性その2

 最近見ることが少なくなった丸太梁。切込みから上棟、さらには完成時にもその姿は変わることなく現れることとなる。見え方見せ方を知ってなくてはつくることができない逸品で、つくる職人は本物の高ウデマエの大工だ。最近の家は細いマッチ棒みたいなフレームでつくりそれを建材で覆って完成。ちまたで「木の家」を彷彿させるようなネーミングの会社や商品化した家が多く現れた。これらも残念ながら普通の家と一緒で建材に覆われたケミカル住宅だ。木の香りに包まれて過ごせそうだが、実際はVOC(揮発性化学物質)とともに過ごす事となる。

梁の重要性その3

 柱の大きさは広告にデカデカとよく出ているが、実際は柱の大きさはそこまで重要ではない。木は繊維方向に対しては高強度だ。よほど背の高い家で柱が長くなり上下からの力で横方向へ曲がらなければ(座屈という)、大きな柱は必要でない。それよりも梁の大きさが重要だ。横方向の部材で上からの荷重をモロに受ける。屋根を支える梁、2階床を支える梁どれも重要だ。これをギリギリまで攻める設計は非常にまずい屋根が軽量、集成材だから強度にバラツキが出ないなどの理由で細くするのは頂けない。なぜか。梁の断面寸法を決める計算方法がある。断面二次モーメントという梁にかかる回転力から算定される。公式はI=B×Hの3乗÷12 Iは断面二次モーメント、Bは梁の幅、Hは梁の高さ

この公式より強度は梁幅に対し比例、梁高さ(梁成という)の3乗に対し比例。梁サイズが幅が2倍になれば2倍。梁成が2倍になれば2の3乗の8倍となる。こんなことはないが梁成が1/2となれば強度は1/8と一気に低下する。最近、こんなことも知らない建築家気取りが多く存在する。建築家を名乗るのは家づくりビギナーだろうが、なんだろうが自由だ。あくまで建築家であって建築士ではない。無免許で建築士は名乗れないし、建築の勉強なくして建築士の道はない。依頼先を間違うととんでもない事が待っている。施行者は当然だが施主側も勉強が必要だ。無知って怖い事だと認識してほしい