2020.05.31
家づくり

なぜタカラスタンダードなのか?

一級建築士|井上秀樹

高品位ホーローはすばらしい

 タカラスタンダードを選ぶ理由は高品位ホーローにある。水廻り製品だけでなく、内外の壁材にも使われている。新八代駅ホームの光沢のある壁材もその一つだ。汚れに強い。水に強い。建築材料においては最高品質だ。弱点は重量が重い。だが建築物は基本動かないので重量に対してはそこまで大きな問題ではない(自動車、飛行機、船舶のように動くものに重量が重いのは材料選定において大きなハンデとなる)。むしろ建築物に対する弱点は内壁外壁の他の材料に比べコストがかかることだ。全面ではなく適材適所で使うのが効果的。家の水廻りに使うのが費用対効果が一番いい

もう一つの理由

 タカラスタンダードのここがすばらしい。商品のグレード、住宅メーカーの受注量に対して値引がなくワンプライス誰にでも同じ価格で売る。逆に言えば、誰もが同じ公平な値段(フェアプライス)で買えるというところ。しかも見えない所も手を抜かない企業姿勢。普通、流し台や洗面台の扉にはいい材料を使っているが本体内部は大抵ベニヤ。タカラは扉も本体内部もグレードに関わらずホーローだ。いい商品が公平な価格で買える。

 かつて、自動車業界も値引合戦にしのぎを削っていた。そこをいち早く打開したのがトヨタだった。トヨタはすべての新車をワンプライスとし、どの客にも同額で売るようになった。それまでは交渉がうまい客には値引を大きく、そうでない客には定価で売った。値引前提の定価。そもそも定価とはなんぞや。とお客が不信感を持つようになった。それから値引をやめワンプライスとした。その結果売り上げは伸び、安定した。さらにリセールバリューも高くなり、次の新車乗り換えのハードルを低くした。これに出遅れたマツダは大幅値引きを当たり前のように続けていた。その結果、リセールが大幅に落ち、新車への乗り換えが減り、さらに良いランクの車が他社の2ランクも3ランクも下の価格で中古で売られるようになったことも拍車をかけ増々新車が売れなくなった。(現在は違う。ちゃんとワンプライス商法に変えている。)

 話が逸れたが、値引というのはお客にも会社にもいい結果はもたらさないということ

住宅メーカーの闇

 ここからは住宅機器の値引について。一般住宅機器メーカーには各商品、システムキッチン、システムバスなどにいくつかのグレードが存在する。高いものから安いものまで。タカラにもグレードはあるが買う金額は表示額でだ。だが他のメーカーは違う。ハイグレードが高く、ベースグレードが安いのは同じ。しかし値引が違う。高いのはそこまで値引はないが、ベースグレード品の値引はエグイ。特にマンション、ホテルなどを手掛ける大手ビルダー全国展開ローコストビルダーへの値引は驚く。80%引きは当たり前。一般工務店の60万~70万のシステムキッチンが20万以下で手に入る。ただ1回の発注で5000台ほど買っている。スケールメリットを生かした販売方法だ。マンション、ホテルはまだいいが、戸建てではこだわりもあるだろうからメーカー標準品では満足できない事がある。その際の変更は普通に考えると変更品価格-標準品価格の差額対応だが、さすがに2割で買っているとは言えないから、変更は差額ではなく変更品の全額がオプションと社内でルールを一貫している。約1000万の家が1700万にも1800万にもなるわけだオプションはあってもせいぜい20%。それ以上が出るようならそもそもの価格設定に問題があり、その値段では家は建たないということ。まあハードなこだわりを要求した場合はその限りではないが…。

 タカラはどのメーカーにも同じ価格で売るから、大量販売には向かない。いいものを適正数、適正価格でつくるまさしく同感だ。安いものを安くつくるだけなら誰でもできる。