2020.05.27
家づくり

本物のしっくいは施工方法で見分けろ!

一級建築士|井上秀樹

本しっくいの施工方法

 本しっくいは施工方法から違う。パテかい(パテ埋め)、下塗り、上塗り、仕上げ塗りと4工程ある。しかも次の工程に移るには全工程で塗った材が乾燥しなくてはならない。材料も高く、施行日数もかかる。(普通の住宅の場合、ビニルクロスは¥1,200/㎡、施行日数2日、しっくいは¥7,500/㎡、施行日数20日)

 しかし、耐用年数が違う。約80年は変色もない。そしてなにより化学物質が一切入ってないので室内の空気感が全く違う。費用対効果で考えるとしっくいが今のところ最強だろう。

 ただ、樹脂が入ってないので塗り材自体に伸縮性がなく壁の動きに対してクラック(ヒビ)が入るときがある。ヒビ<室内の空気環境といったところ。

一般のビニルクロス

 現在建物のほとんどがこのビニルクロス仕様となっている。商業施設、公共施設、事務所、集合住宅などなど…。他の仕上げ、板張り、塗り壁、石貼りはほとんどない。施工性の早さ、コストの安さからすれば最強の素材。ただクロス職人は多数おり、ウデマエのピンとキリの差が大きくなっている。どこで判断できるかというと、継手の部分(リピートという)で判断できる。クロスは幅約1mのロール状の壁紙を天井と床の長さでカットし左右のどちらかから順に張って行く。さらに模様が入っているので、その模様に合わせ高さを微調整する。模様をあわせるのに少し長めに切っておかないと、模様があわない。スピード、コスト重視で貼ってあればリピートなどはお構いなし。柄がスパッと切れたまま。住宅メーカーの発注単価が安いことが伺える。

 化学物質については、クロス自体は安全だが、張る糊(接着剤)に問題がある。これが独特の匂いを放つ。また火災の際、塩素ガスを発生させるものがある。住宅火災で元気な大学生がなくなることがあるが、塩素ガスを吸って神経系がマヒし動けなくなって…というのが原因。木の家は火災になっても身体がマヒするようなことはない。昔火災で若者が亡くなることが少なかった理由でもある。火事なら逃げる。ネズミでも知っている。

最近流行りの和紙クロス

 和紙クロスだから自然素材の健康住宅というのをよく聞く。確かに和紙自体は自然素材である。しかし、これまた壁紙。結局、糊(接着剤)で張る。その接着剤に問題があることはナイショ。でも、しっかり海藻糊を使っているとこもあるようなので、一概にダメとは言えない。火事の時もガスは発生しないので火災時も安心だ。ただ、和紙は伸び縮みするので、張り合わせ(リピート)の部分を突き付けではなく1cmほど重ね合わせなくてはならず、壁に1cm大の線が1mおきに縦に入る。見栄えが良いかは人による。

健康素材の塗り壁?

 最近流行りのウェーブ仕上げの塗り壁。外壁内壁問わずよく見るようになった。少しお高めのおしゃれな住宅に使われているようだ。確かにおしゃれではあるが、家はファッションと違い衣替えはしない。何十年も住まなくてはならない。もともとこの仕上げはケッペンの気候区分でいう地中海性気候の地域、イタリア、スペイン、ポルトガルの建物に多く使われてきた。よく見るオレンジ瓦に白壁の建物だ。この地域は日本と違い雨が少ない。よって庇が短くても関係ない。壁に凹凸があっても関係ない。日本は温暖湿潤気候ではあるが、ここ熊本は近年、亜熱帯化してきている。スコール並みの雨に見舞われることもある。それに短い庇、凹凸の壁なら2年もすればコケだらけとなるだろう。室内はほこりがたまりやすくなる。その他に最も重要な懸念すべきファクターが存在する。それは、この塗り壁材には凹凸を保持するために、可塑剤という樹脂が含有されている。自然素材ではなくケミカル素材であることの方が多い。また表面積が凹凸があるために壁自体の表面積の2倍くらいになる。そこから放散される化学物質の量も2倍だ。ハイコストにハイリスク。おしゃれの裏に隠された代償は大きい。普通にクロス張った方が安いだけまだマシ。