2020.05.24
家づくり

屋根の種類はこういう理由で決まっている!

一級建築士|井上秀樹

折板屋根

 山を作り曲げに強くした金属屋根。勾配もゆるく作ることができ、施工も容易かつ短期間で可能。軽量であるため部材寸法を極限まで細くでき、本数も減らせるため構造(フレーム)部分もローコスト化できる。勾配もゆるいため外壁の面積も節約できる面でもローコスト化に貢献している。今度は逆に勾配がゆるいため、枯れ葉、ほこりなどが堆積し、雨水が流れにくくなり、金属屋根の致命傷ともなる錆を発生させてしまう。5年から10年ごとに防錆塗装などのメンテが必要。断熱性能はほぼ皆無で熱エネルギーは貫通してくる。また、天井から屋根までの距離が近く室内が高温になりやすい。冬は冷気が入ってきやすく、室内が低温になりやすい。ハイパワー冷暖房を24時間フル稼働させなけらばならなくなる。一発目の導入費(イニシャルコスト)は安いがは維持費(ランニングコスト)は増大の傾向となる。よって、ガソリンスタンド、コンビニ、倉庫等の商業物件に多く採用されている。撤退も考えられる物件にはそこまで費用はかけられない。でもどういうわけか最近は一般住宅にも多く採用されてきている。転勤先でその都度家を買う新手の転勤族向けなのかもしれない。

板金屋根

 板金屋根の代表的な瓦棒ふき屋根。こちらも折板同様、勾配をゆるく作ることができ、軽量であるため部材寸法を極限まで細くでき、本数も減らせるため構造(フレーム)部分もローコスト化できる。勾配もゆるいため外壁の面積も節約できる面でローコスト化している。今度は逆に勾配がゆるいため、枯れ葉、ほこりなどが堆積し、雨水が流れにくくなり、金属屋根の致命傷ともなる錆を発生させてしまう。5年から10年ごとに防錆塗装などのメンテが必要。断熱性能はほぼ皆無で熱エネルギーは貫通してくる。また、天井から屋根までの距離が近く室内が高温になりやすい。冬は冷気が入ってきやすく、室内が低温になりやすい。ハイパワー冷暖房を24時間フル稼働させなけらばならなくなる。一発目の導入費(イニシャルコスト)は安いがは維持費(ランニングコスト)は増大の傾向となる。折板との相違点は、施工が難しく屋根自体にはコストがかかるという点。

 もともとは積雪地方で使われている屋根工法。積雪により屋根に重量が載っても家がつぶれないように、また雪が滑り落ちて来て通行人にけがを負わせないため、雪下ろしがしやすいようゆるい勾配としている。また積雪荷重はとても大きく梁などの構造部材(フレーム)を重量屋根(瓦等)用としている。最近、熊本八代でも板金屋根をみるが、屋根の軽量化は耐震性能を上げるとはよく言うが、軽量化に伴いフレームも細くしたり、本数を減らしていることは口にしない。

 ちなみに板金屋根から瓦葺きへの変更は構造計算上安全性が確認できなければ認められない。

スレート屋根

 ある一時代を築いた屋根材スレート瓦。一昔前はどの家にも使用されていた。こちらもゆるい勾配、軽量なので外壁面積、構造部材とローコスト化が可能。板金ほどではないが熱を通しやすく下地ベニヤへダメージを与え続ける。下地がダメになるとスレート割れやすく屋根へ上る場合は転落の危険性も検討しないといけない。塗装など行う際は注意が必要だ。その塗装も屋根を長く持たせるには5年10年ごとに1度は行う必要がある。最近はほとんど見なくなった。

瓦葺き

 日本古来からの瓦葺き。その長き歴史を経て伝来しているのには訳がある。瓦自体は淡路いぶし瓦、石州瓦、三州瓦等採れる土の地域により名称がつけられている。どれも耐候性に強く、耐用年数は40年~60年、ものによっては200年以上も前から現存しているものも…。瓦自体の断熱性能も高く熱を通しにくい。屋根構造も雨を流すため勾配を大きく取らなくてはならず、屋根が大きくなり、天井から屋根までの距離が遠くなる。その懐のおかげで室内は夏は涼しく、冬は暖かくなる。ただ屋根が大きくなる分風当たりは強くなるというデメリットが発生してしまう。以前は瓦は耐風性能に乏しく風速35m/sくらいで飛んでいっていたのが、最近は風速70m/sまでは平気で持つようになった。瓦によっては110m/sも耐えるものもある。屋根が重くなることで耐震性能が落ちると言われているが、かつて木造建築は柔構造といって建物をあえて揺らすことによって地震力を吸収していた。建物は倒壊せずとも瓦、建具などは外れていた。それが法の改正により地震力は壁で受けるようになり、揺らさない構造が基本となった。直近の改正ではさらに建物に回転方向への力を軽減させるため、壁配置のバランスも検討事項に含まれた。瓦が重くなることで耐震性能が落ちることはまったくない。それよりも台風などの吹き上げに対抗するため、屋根の重さで軽量の木造建築を押さえつけるという大事な役目がある。ちなみに木造建築は鉄骨造、鉄筋コンクリート造に比べ軽量の構造だ。軽量ゆえ建物に影響を与える外力は地震力よりも風圧力の方が大きい。つい熊本地震があったばかりで耐震を売り文句にしているのが増えてきているが、耐震より重要なものは?と聞いてみるといい。耐震ばかりに気を取られ台風で吹き飛ばされていては話にならない。

地元の神社「三神宮」

 築約850年の地元の神社「三神宮」。850年もの歳月を経た来たのにはちゃんとした理由がある。大抵、築200年以上の神社仏閣に共通している秘密がある。

 それは、「雨対策」木造建築において雨が耐用年数を縮めてしまう。それを先人たちは知っていた。雨を流すため、ほこりなどの堆積を防ぐために屋根に勾配つける。神社などにはさらにこういう性能を付加している。それは、雨が最速で落ちる勾配。物体が最速で転がり落ちる曲線。「サイクロイド曲線」にて、つくられているという性能。あの独特の屋根の反り具合がサイクロイド曲線。パソコンなどの解析もなかった頃にこれを実現した先人たちの知恵に脱帽した。

 自転車のタイヤをイメージしている。円が横方向に動くときの円周上の1点が動く軌跡。これを上下逆にすると、頂点から最下部まで物体が最速で落ちる曲線「サイクロイド曲線」となる。