2020.05.18
家づくり

庇の重要性

一級建築士|井上秀樹

 2年前に増築した部分です。敷地境界までの距離がなく、仕方なく軒をつけなかったのですが、これが大失敗…。屋根も勾配の緩い(ほぼ水平)鉄板で、夏の日射は垂直に刺さり、とにかく熱い。暑いではなく熱いです。おまけに雨の音もパンパンうるさい。さらに雨が外壁に直当たり。シャッターボックスもこの短期間で苔だらけ。

 ちなみに断熱はしっかりしてあります。でもさすがに夏の熱射エネルギーが垂直に当たるのでは貫通します。エネルギー量がとんでもなく高いですね。やはり屋根は勾配をつけて日射の入射角をより鋭角にし、エネルギーの貫通を緩和させなくては厳しいですね。東北より北みたいな寒い地域ならいいと思いますが…。

 他の部屋はそんなには暑くならないんですけどね。




 うちの玄関です。深い軒のおかげで壁はきれいなまんま。雨の音も全くしません。夏は玄関入るとヒヤリと涼しい。

 やはり「雨と日差しは庇で受ける」というセオリーは正しかった!自分が人柱になってどうする。高い授業料だった…。

 壁で雨と日射を受けてはロクなことがない。最近はやりの高気密高断熱。ここ熊本では24時間空調を余儀なくされることになる。屋根を貫通した熱エネルギーは、家の中に入り、壁の高断熱のおかげで熱が逃げない。魔法瓶の中に入って上から熱せらるような感じ。いくら断熱が凄いと言っても、ここ南国熊本の熱射エネルギーはもっと凄い。高エネルギーの熱射が何日も何時間も降り注がれる。断熱では防ぎきれない。

 赤道直下の国パプアニューギニアの家。

 屋根はヤシの葉で壁はお世辞にも断熱などはない感じで、雨をよけれればいい程度のもの。

 通気性で日射エネルギーに対抗している。当然エアコンなどはついていない。24時間空調もない。

 熱い地域の家は、「勾配屋根」、「壁の通気性」これに尽きる。